森のそよ風のブログ

ゆっくり資産運用と、日常の記録

VIG-ETFと、マイクロソフト、AT&T

こんにちは。


豪雨のあった九州南部は 梅雨が明けたそうですが、本州も梅雨明け近しの空模様と気温になってまいりました。
長期予報では、今年の夏は平年よりやや気温が高くなる見通しとのことですが、皆様は盛夏に向けての準備はいかがでしょうか?


さて、資産運用のブログ仲間より、米国の連続増配銘柄ETFである”VIG”において、VIGの配当を100%再投資するとトータルリターンが非常に良いという情報を得ました。
見たところ、その収益率は超優良銘柄のマイクロソフトの直近のトータルリターンにも匹敵しそうな勢いなので、筆者の方でも確認してみました。


例によって、Portfolio Visualizer の backtest機能を回してみました。



前置きは短めにしますが、シミュレーションにあたっての重要な「条件設定」だけきちっと書いておきます。


 ◎ 配当(分配金)は全額再投資
 ◎ 運用途中での、配当再投資以外の追加投資は無し。
 ◎ 比較銘柄は、MSFT(マイクロソフト), VIG, VYM, VOO の4銘柄


早速 シミュレーション結果を掲載します。


1. 先ず短期の1年


◆期間は、2020年5月末から2021年5月末 の12か月間とします。
◆終了日を6月末としなかったのは、6月1日以降 ハイテクが急角度で上昇したため、
 マイクロソフトにバイアスがかかり過ぎた結果が出ることを避けました。


緑:VOO(S&P500)、青:マイクロソフト、 黄:VYM、赤:VIG


図が小さくて済みません。  PC画面上で拡大してご覧ください。


<結果>
① インデックスのVOOが、MSを上回る予想外の大健闘(最高値更新だけのことはある!)
マイクロソフト、VYM、VIGの3者は、配当再投資で非常に肉薄!
  ・・・直近1年では、確かにVIGは配当再投資で, (同) MSFTに近いパフォーマンス!
  ★ MSFTも VIGも 共に配当再投資条件なので、公平な比較です。
③ 期間を通してVOO(緑) と VIG(赤) に安定感あり。


◎◎ ブログ友達の観察は、確かに証明されました!!!!



2. 長期の10年
◆期間は、2011年5月末から2021年5月末 の10年間とします。
◆終了日を6月末としなかったのは、6月1日以降 ハイテクが急角度で上昇したため、
 マイクロソフトにバイアスがかかり過ぎた結果になることを避けるため。


緑:VOO(S&P500)、青:マイクロソフト、 黄:VYM、赤:VIG


① 成長株の代表選手であり模範生のマイクロソフトが、10年の配当再投資運用のリターンでは断トツ!
② しかも、マイクロソフトは 下落(落ち込み)も少なく、さすがに抜群の安定感!
     (ソルティノ・レシオも VOOを大幅に上回って抜群の好成績です。)
③ VOO(緑) がリターンの2番手。
④ VIG(赤)3位、VYM(黄) 4位 ですが、両者は大差無し。
⑤ VIGとVOOの安定度は、同等で良い値です。(VYMも それに接近)



非常に長い年月に渡って、世界の職場と家庭のパソコンや クラウドのサーバーを支えて来たマイクロソフトは、長期投資先としても信頼度が高い状況です。(もっと買っておけば良かった...)



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【追加 : AT&Tの評価】


さて、筆者も 運用開始直後から つい数日前まで大事に保有して来た 高配当株で、多くの投資家に非常に人気の高いAT&T株 ("T") を同じ土俵で検証してみました。 
シミュレーションするのは若干躊躇されましたが、Fact Findingは何事においても改善のためのレビューの基本ですから、確認してみます。
★ もちろん比較する全銘柄に対して、「100% 配当再投資」の同じ条件です。


3.先ず 短期(1年)


◆期間は、2020年4月末から2021年4月末 の12か月間とします。
◆終了日を あえて4月末としたのは、AT&T社にはメディアコンテンツ事業のスピンアウト問題の発生という特殊事情があったために5月13日より株価が急落しました。5月を含めるとそのネガティブな影響が強調され過ぎるため、期間は4月末で切りました。下図では、May2021 と出てきますが、最終日は4月29日です。



緑:VOO(S&P500)、青:AT&T(T)、 黄:VYM、赤:VIG


● 上記の期間においては、 "T" は1年前と比較して株価が少し復調したことと、配当を7%前後出す株なので 1年で約16%の評価額上昇(配当再投資分+上昇含み益) となりましたが、他の3銘柄の配当再投資リターンが45%から58%出ているのに対し、結果的に大きく水を空けられています。


直近1年はコロナ後回復でのグロース株優位だった可能性もあり、短期だけ比べるのは不公平なため、長期10年も確認してみます。



4.長期の10年


緑:VOO(S&P500)、青:AT&T(T)、 黄:VYM、赤:VIG


●  2016年末頃までは、”T”は 十分健闘していましたが、その後 株価は大筋で下落傾向となりました。グラフは配当再投資込みの評価曲線なので下落角度は緩和されていますが、2017年以降は 株価自体はもっと下がった時期もあったはずで、拾うタイミング次第では今日時点の収益は 幾分のプラスもあり得ますが、全体としては10年の配当再投資しても結果的に投資効率はかなり低かった状況です。他の3銘柄は、"T"のほぼ3倍の220%~280%の総収益を出しています。 同じように『配当再投資』をしても、"T"と他の3銘柄の10年長期の資産の増え方は大きく違ったものになりました。


配当利回り7%の”T”が、もしも 株価上昇性能が若干でも (たとえば年平均で 3~4%くらい) あったとしたら、10年運用の資産増はVOOに対して遜色が無かったはずです。単なる仮定の話ですが、そこは非常に重要な点です。
配当再投資を丹念に継続するとしても、その対象が単に高配当であるというだけでは、資本効率があまり上がらないのです。配当再投資は、正しい対象銘柄を選べばしっかり結果を出してくれますが、単に高配当で株価がヨコヨコで停滞している銘柄を対象にした場合は、配当再投資の本来の威力は あまり発揮されないことが、この分析でわかります。本来狙う「複利効果」でなく、「単利効果」に近い効果しか発揮できないからです。
そのことは、逆説的に、筆者のブログ友達が、逆に配当利回りが1.7%程度しかないにもかかわらず年間の成長率がVOOに近いVIGへの配当再投資を1年間実行した結果、高成長株の模範であるマイクロソフトに匹敵する配当再投資収益額をもたらした1年間があったことでも証明されています。つまり、配当再投資する対象の銘柄を きちっと選べは その効果を大きくし、配当再投資の本来の潜在能力をフルに発揮できることが ブログ友達の実践によって証明されているのです。


老後のための貴重な資金を投入し、運用開始当初から"T"を保有して来た筆者のような立場の身にとっては、この結果は見過ごせないものとなりました。



● 次に、VOOが頭ひとつ抜け出した結果になりました。
VOOは、ただ持っていて、放ったらかしでも十分な成果をもたらしてくれる銘柄です。配当率は最新値で1.35%程度と低いですが、その配当を再投資すると、凄みが一段と増します。


しかしながらVOOは配当率が低いので、一株買うだけの配当金を集めるのに時間がかかります。(それでも、もし数十株以上持つことができれば、定期的な配当再投資は可能で、その配当再投資の効果は大きいのですが。)  


そういった意味で、配当再投資をする対象の銘柄を選ぶ投資家の腕が試されます。単に高配当だけでは効果は薄く、他方で、配当率が低いと再投資の頻度が下がります。しかし、高配当でなくでも「好配当」で成長する好対象の銘柄は数多くの候補があります。地味でも堅実に売上利益を増やし持久力もありそうな好プレーヤーを見つけて再投資を繰り返す、そこが低リスクで資産を増やせる配当再投資のスイートスポットです。対象は個別株に限らず、ETFでも構いません。


話は元に戻りますが、VOOはさすがにアメリカ経済を牽引するトップ企業500社で構成されているだけのことはあり、コロナショックでは市場の他の全ての銘柄と一緒に下がりましたが、それも いち早く克服して流石に強いです。



5.まとめ


今日は、成長株の代表選手であるマイクロソフト、インデックスのVOO、堅調ETFの VYMとVIG、高配当株の代表選手であるT(AT&T)を、すべて配当再投資付きでバックテストしてみました。


総括は、下記に尽きると考えます。


① マイクロソフトは抜きん出た「安定感」と高収益成績の銘柄である。
② インデックスのVOOは やはり強く、連続増配ETFのVIGも着実な結果を出している。
③ 配当再投資を実行する場合には、配当利回りを確認しながらも、株価や基準価額が ある程度の長期的上昇が見込める銘柄を選んで資本効率を高める必要があることを会得。



今回の分析結果について、以下、さらに所感を補足します。


マイクロソフトについては、堅実で人気の高い主要なETFのほとんどにおいて、そのポートフォリオ構成の上位で採用されている理由が納得できます。
筆者は、これまでマイクロソフトのバックテストをしたことがありませんでした。
出勤の日も 在宅ワークの日も、マイクロソフトの Windows や Officeを、1年365日のうちの99%の日で使っており、それが無くては仕事と生活が成り立たない投資家ユーザーでありながら、一度 買い付けして以降、買い増しもしたことがなく、その実力を全然 活かせていませんでした。まさに『灯台元暗し』状態で、大きな反省です。


VOO (S&P500 ETF) は、アクティブファンドでも その7割が勝てないと言われる強力なETFです。VOOや それに近い成績のETF、あるいはインデックス投信 (全世界インデックスや先進国インデックス) に運用の大部分を任せる戦略が、結局は一番確かでブレの少ない結果が出ると考え、筆者は今そのようにポートフォリオをシフトしていますが、本日の分析結果を見て それが間違っていないと改めて実感します。そういった世界の主要なインデックス系の銘柄を選ぶと、結果的にマイクロソフトが 上位で含まれている場合が多いので、個別成長株への不安がある場合でも安心してマイクロソフト等の優秀な個別銘柄の優れた成果も合わせて享受できますね。


高配当個別株については 株価が上がらない場合が多いため、長期投資目線で考えると、上記のAT&Tの例で見たように たとえ配当再投資運用を徹底しても資本効率が低位にとどまりがちです。この点は、筆者も高配当株を複数持っていて、配当を含めた資金で買い増しをして来たので、客観的かつ謙虚に受け止めて再考証したいところです。
しかしながら 人それぞれの投資方針によっては、配当のような感覚で定期的に小刻みなキャッシングを求めたい場合もあろうかと思います。そのような場合は、 個別リスクが色々存在し小刻みな金額での売買が難しい配当個別株への投資に必ずしもこだわらず、 少額購入や少額売却の柔軟性があって, 堅調で資本効率の良い他の投資商品 (例えば強いインデックスの投資信託) を用いて, 場合により適量だけの少額部分売却を併用するといった方法が、キャッシング機能と 高い資本効率の確保を両立させる施策として有力かも知れません。


VIGについての補足です。VIGは max drawdown (下落局面の最大月間下落幅) が小さく、市場貸出し金利がゼロ金利政策のために債券ETFの利回りが下がった近年においては、底堅いVIGを債券ETFと併用して使う手があるとの見解が分析の専門家から聞かれるようになっています。
引き続き、安定度・配当・キャピタルゲイン 三拍子の優れたバランスを持つVIGを、ポートフォリオのコーナーを固める存在として有効に活用して行きたい。


最後に、しかしながら、未来が 100% 過去のデータと同じようになるわけではありません。
投資は、自らの事実把握・分析と判断でお願いします。



最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。