森のそよ風のブログ

ゆっくり資産運用と、日常の記録

アライアンス・バーンスタイン を バックテストしてみた。


こんにちは。


筆者はセミリタイヤしておりまして、給与収入(フローの収入)が激減したので、将来の生活資金を充実させるため、預貯金並びに退職金から 可能で安全な範囲の資金で、いくつかの銘柄の「投資信託」を買って運用しております。


その中の主力の3本柱は、
 ① eMAXIS slim 全世界&米国 インデックスファンド
 ② 米国株式配当貴族投信 (野村AM)
 ③ アライアンス・バーンスタイン・米国成長株投信
です。


今日は、③項の 「アライアンス・バーンスタイン米国成長株投信」について、分析の結果を記録に残してみたいと考えます。



「アライアンス・バーンスタイン米国成長株投信」は、その名前を見ると、米国の”成長株”に投資とのことなので、その中身を十分理解する前は、GAFAを初めナスダックのハイテク グロース銘柄に集中して投資しているのではないかとの印象を持ちがちです。
米国のナスダックに上場する企業は GoogleやFacebookなどハイテク企業が多いので、ナスダック株を多く買うと、上がる時には大きく上がる(含み益が大きく増える)けれども、ひとたび風向きが変わると下落幅も大きく、”結果として非常にハイリスク” なのではないかというイメージを持つ人は少なくないと思います。


筆者も同じように思っておりました。


筆者が最初に投資信託を買ったのは、2020年3月20日頃のコロナショックの大底の 少し後で、株価が戻り始めた時期でした。
最初に買ったのは堅実感のある上記の②の「配当貴族」でしたが、1種類だけに依存するのは不安があったので、いくつかの候補の投信について過去数年のリターンを調べてみたら、「アライアンス・バーンスタイン米国成長株投信」が何となく良さそうで、純資産が非常に大きく日本の投資家も多く買っているようでしたので、これから株価が復活してくるタイミングで丁度良いと考え、(コロナ2番底が来るのではないか?など) 多少の不安はありましたが、「もし 万が一 下がったら、損が小さいうちに売却してしまえば良いだけのことだ!」と腹をくくって 思いきって買ってみました。 「リスクが高いかも…」と思っていたので、初回注文のリターンキーを押す時には、おっかなびっくりで、かなり緊張しました。当時は分析スキルも低かったですから。



以下、アライアンス・バーンスタイン投信を「 A.B.」 と略称します。
買って以降、A.B.の評価額は順調に伸びました。2020年の9月とか、今年の2月とか、一時的に下げたり 足踏みする時期もありましたが、2020年 夏の終わり頃までに一定の含み益を獲得していたことと、(理由あって Dコースを買いましたが)年間合計すると約20%強の利回りの分配金が毎月出たので、それに支えられ、解約した方が良いかと悩むことは全くなく今まで継続保有して来ました。それよりも、別に保有していた 一般の個別株の方が遥かに悩ましかったのが現実でした。


昨年の3月から4月末にかけて2, 3 回に分けて買ったA.B.(Dコース)の第1ロットは、本日現在のトータルリターン率は49.6%となっています。


アライアンス・バーンスタインの安定感を実感したので、直近の3か月ほど前から分配金をほとんど出さず利殖効果の高い「Bコース」の毎月積み立てを始めました。


Bコースを始めて以降、その基準価額チャートを時々チェックしますが、新たな発見がありました。
それは、最近6か月において、米国ナスダックの下げ局面を2回経験した際のことです。
1回目は、今年2月の上旬から3月上旬にナスダック平均指数が11%程度下落しましたが、A.B.は6%しか下がっていなかったこと。2回目は、同じく4月下旬から5月上旬にかけてナスダックが8%ほど下がりましたが、A.B.は一時 5%下げたものの すぐに自力反発し、現在は2回目の下げ直前ピークから更に2%上昇し、日々 過去最高値の更新を覗っている状況で、ダウよりもナスダックよりも むしろ下落しにくい印象です。
この結果、ナスダックの直近6か月のチャートと、A.B.(Bコース)の 直近6か月のチャートは、その波形は全く異なった姿となっています。
A.B.は、ミニ・ナスダックではなかったのです。


名前からして「米国成長株投信」なので、GAFAを中心としたナスダック上場株をへの投資でハイリスクだろうと思いがちですが、実際に運用してみて非常に堅実な投信だと感じています。
このことから、A.B. という投信は、ただモノではない ”賢い投信” ではないかと考え、今回しっかり分析してみることにしました。


例によって、Portfolio Visualizer の Back Test 機能を使います。



1.アライアンス・バーンスタイン投信の構成銘柄


 アライアンスバーンスターン「⚪︎⚪︎コース」という米国市場に上場する銘柄はないので、バックテストをするにあたってはA.B.投信を構成する上場銘柄に分解し、保有比率も反映してポートフォリオを作って、Portfolio visualizerで バックテストします。
 A.B. を構成する全個別銘柄は、アライアンス・バーンスタイン社のホームページで公表されています。(通常、投資信託は保有トップ10銘柄しか公開しません。)
下記の表です。


なお、下表の銘柄リストは、2021年6月上旬にアライアンス・バーンスタインのホームページから引用しましたが、保有銘柄は「随時見直す」としていますので、最新の銘柄やその保有比率は既に変わっているかも知れないことをお断りしておきます。 




上位25銘柄だけ示しました。
(フリーで使えるPortfolio Visualizerのバックテスト機能が、最大25銘柄までのため。)
上位25銘柄だけでも、そのトータルの占有率が 全体の約83%あるので、シミュレーションするには十分でしょう。


ちなみに、A.B.は、A~Dの4つのコースがあり、
 A: 年2回決算、為替ヘッジあり
 B: 年2回決算、為替ヘッジ無し
 C: 毎月決算、為替ヘッジあり
 D: 毎月決算、為替ヘッジ無し


B、C、Dの人気が高いようです。 筆者は、BとDを運用しています。
全コースとも 投資先の銘柄企業は 比率も含めて同じです。



2.バックテストの要領


これを、Portfolio Visualizerのバックテストにかけてみます。


(1)期間


  期間は、下記の6通りです。


     3か月
     6か月(期間内に、2021年2月3月の米国長期金利高によりグロース株調整)
     1年(期間内に2020年9月のグロース株大調整)
     2年(期間内にコロナショック)
     3年(期間内に2018年10月~12月の株価下落)
     5年(期間内に2018年2月の良好な雇用統計を受けた利上げ警戒による大幅な下げ)



(2)ベンチマーク


 ベンチマークとして下記ETFを同時テストします。


  ①DIA(ダウ30種平均ETF)
  ②VOO(全米S&P500種ETF)
  ③QQQ(ナスダック100種平均ETF)



いずれも純資産額が全米でトップクラスのETFであり、相手に取って不足はないでしょう。


★ここで念のため、重要な補足説明をしておきます。
  DIA、VOO、QQQは ETFであるため、それらを買うと経費が発生します。
一方で、A.B.の構成銘柄の株を直接市場で買うと、1回限りの若干の購入手数料はかかりますが、保有期間内の継続的な経費は発生しません。
一方、A.B.を「投資信託」で買うと、年率の信託報酬がかかります。
それらのことを下表にまとめました。


 


なお、投資信託の形でA.B.を買うと、年間で保有金額の1.73%の信託報酬を取られますが、それは、言うまでもなく決して安い維持費ではありません。
A.B.を買った投資家は、安くない信託報酬であると十分認識した上で、それでも十ニ分に有利だと判断して買っているはずです。リターンを期待できないファンドに対して高い信託報酬をわざわざ払うことと一緒くたに扱うのは避けなければいけません。


本日のバックテスト(ポピュラーなETFとの ベンチマーク比較付き)でも、経費率や信託報酬は意識しなければなりませんが、それらの経費をどう評価するかは、このあと述べるリターンやパフォーマンスの具体的な数字をご覧になってから、読者にてご興味のある方は それぞれでご判断いただけたら幸いです。



3.バックテストの結果


 以下に、2項の6期間の バックテスト・チャートを掲載します。
青い線が、A.B.(Bコース)です。
シミュレーション上の都合により、DIAの曲線は表示されておりませんのでご了承ください。
後掲のサマリー表にはDIAのシュミレーション結果も表記しております。









チャート図だけ眺めていても、総括的な結論がわかりにくいので、サマリー表にしてみましょう。




4.ベンチマーク比較の「総括サマリー」



以下に、サマリーを表の形にまとめました。



A.B.(アライアンス・バーンスタイン)の内部構成銘柄によって自分で組んだポートフォリオを、「ABPF」と表記してあります。(Aliance Burnstein PortFolio の略です。)


ABPF と、DIA,、VOO、QQQ のすべてについて、各評価期間にて、
 ・トータルリターン
 ・最大下落率
  (下落局面での 月単位で集計した月次の下落率のうち、期間全体での最大のもの。
   2か月連続で下落した場合は、2か月通算の下落率)
 ・シャープレシオ
 ・ソルティーノレシオ
の順位を、優れている順に 1位~4位で 並べてみました。


今回の分析対象のA.B.は、緑色で塗りつぶして わかり易くしてあります。




注:トータルリターン欄に示した数字についての補足
  上表のトータルリターン欄に示した数字は、株価の単純な変化率ではありません。
  配当収益を含み、配当を再投資して得たトータルの収益率を示しています。
  従ってこの数値は、銘柄の株価チャートを見るだけでは出て来ません。



上表を見るとわかりますが、直近の3か月では、ABPF、DIA、VOO の3者が上位を競り合ってますね。
QQQについて補足すると、QQQは6月の上旬から中盤にかけて盛り返してきてはいますが、直近の3か月という期間全体では、4月終盤から5月上旬に インフレ警戒でグロース株売りがあったので旗色が悪いです。


直近の6か月に範囲を広げると、VOOが調子が良かったのですね。


直近1年間を通すとどうでしょうか?
QQQ、APBF、VOO が、評価項目ごとに1位を分けあっていますね。
直近1年の通算では、この3者が僅差で競り合っていることが良くわかります。また、1位から4位まで順序が付いてはいますが、4者のスコアに大きな差はありません。ABPFは1位でなかった項目においても、VOOやQQQに匹敵する十分に安定的な結果を出していることがわかります。



さて、2年から5年 へと 時間軸を長くし、中期から やや長期で見るとどうでしょうか?
表を見ると、ABPFの独壇場の様相を呈しています。


5年の長丁場では、ABPFはグロースETFの雄であるQQQをもトータルリターンで寄せ付けず、かつ、下落のしにくさを示すソルティノレシオでも、大御所の3ETFにかなりの差をつけています。
ソルティノレシオ= 3.2 という安定性を伴って、米国を代表するインデックスであるS&P500を170%以上も上回って結果を出したら、十分過ぎる立派な成績ではないでしょうか?
長期に亘ってこれくらいの結果を出してくれたら、毎年 仮に5〜6%ずつ取り崩しても、継続運用残高も同時に増えて行くので、例えば70歳からの25年くらいは優に財布になってくれる可能性があります。


余談ですが、老後費用を高配当個別株の配当だけで賄えないかと考えたことがありますが、大きな金額の元本が必要なので相当な資産家でなければ難しいし、高配当株というのは(業績不振の銘柄が高配当化しているの論外として)比較的安定している銘柄が多い反面、既に成熟株で長期的には株価が上がりにくいのが一般的なので、私の場合には 評価額の増加が少ない銘柄の配当収入だけで長い老後を潤沢に賄うのは、現実的に難しい状況です。あくまでも私の場合の話です。
(そのことが、分散が効いていて評価額も増える投信を真面目に検討するきっかけになりました。)


子供が成人して経済的に自活していれば、私が人生を終える時には私自身の金融資産残高は多く残さなくても良いわけですから、こういった優秀な投信を選んで「運用しながら 増やしながら 取り崩して徐々に使い、逝く時には大部分を使いきっている」という方法は有効で かつ現実的に達成可能な選択肢になる可能性があります。


どの程度増やせるか次第ですが、もちろん過去の実績は将来を保証するものではありませんが、2018年秋から冬の18%下落や、30%下げた2020年春のコロナショックを くぐり抜けて来て安定感のある実績を上げている A.B.の 5年データは十分考慮に値し、一つの選択候補となり得そうです。



話を進めます。
「リターンと安定性(下値の固さ、自力反発力の強い内部銘柄)」の両方を兼ね備えたポートフォリオを編成するということが なかなか容易ではないことは、筆者自身も身を持って経験して来ました。そしてこの先、時代の役割を終えた銘柄を解約し、堅調な銘柄を買い増しする「リバランス」も、年齢的にいつまでできるかわかりません。


さて以上のことから、A.B.のポートフォリオは、単なる『ナスダックのグロース株の寄せ集め』ではなく、下落しにくい優秀なグロース株に加えて、成長は緩やかながら下値の固い堅調株をミックスした非常に良く考えられた組成である可能性が高いのです。
事実、構成銘柄を全て総覧してよくよく見ると、NYSEの銘柄をも多く含んでおり、筆者が知る限りでも上位25銘柄中の8銘柄が、NY証券取引所(NYSE)に上場するものです。
ハイテクのみならず、例えば、巨大な倉庫風の店舗に多様で膨大な商品を積み上げて会員に廉価に売る ”コストコ”や、長い歴史を持つ手堅いホームセンター事業の会社である Home Depotなども含まれています。(日本でいうとジョイフル本田 とか ニトリ みたいな銘柄です。) これらは全然ハイテクではないですね。また、ROEやROICなど収益性を重視するとしており、実態業績と株価の乖離が大きく資本効率が低いとされるテスラなどは含んでいないとしています。
更に他の情報源を見ますと、ナスダックから約2/3、ニューヨーク証券取引所(NYSE)から約1/3を採用しているという情報も見られます。
単純なハイテク成長株オンリーではないですね。 安定性も相当考えられていると想像されます。


【お断り】
本分析の結果の見方ですが、改めて下記の点にご留意お願いします。


注1: ポートフォリオ"ABPF"は、アライアンス・バーンスタイン米国成長株投信 Bコースと同じものではありません。投資信託の方は年率1.73%の信託報酬がかかり、また、投信の分配金と "ABPF"内の個別銘柄の配当金の総計は同じではありません。従って、投信の実際の評価額と、計算上の ポートフォリオ"ABPF"の計算額の間には、ズレがあります。


注2:また、米国ETFの DIA、VOO、QQQのリターン等の分析は米国ドル建ての計算となっている一方で、投資信託のアライアンス・バーンスタイン投信は、円建ての商品ですので、為替レートの影響を受けて変化します。
その意味でも、ポートフォリオ"ABPF"と 米国ETFの対比の結果と、投資信託であるアライアンスバーンスターンと米国ETFの対比の結果は、全く同じというわけではありません。



5.まとめ


感想を書くと無数に出てきそうですが、別の機会に譲ります。


筆者はA.B.を改めて高く評価します。
国内で1、2位を争う純資産を集めているファンドとなっている背景を、十二分に理解しました。
そして、信託報酬率の大小だけで投資先を一律的に比べることが 最適解であるとは言い切れないと改めて認識しました。信託報酬を受け入れられるかどうかの判定は、期待可能なリターンや安定性とのバランスによって今後とも考えることにしたい。


そして、詰まるところファンド選びは、よそから聞こえて来るレッテルに振り回されることなく、自分でファンドの内容をよく調べ、良く理解し、自らが最適なものを選ぶ選球眼を持つことに尽きるということを再確認しました。


筆者は 今後とも、この投信を運用の柱の一つとして最適な買い増しに努めてゆく考えです。


最後になりましたが、投資は自己責任でお願い致します。
本日も最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。