森のそよ風のブログ

ゆっくり資産運用と、日常の記録

資産運用における “ゴール設定” と “出口戦略” (その6)


こんにちは。


 私の資産運用の ”ゴール設定” と ”出口戦略” について、数回にわけて書かせていただいています。
 今日は、6回目です。



《目次》   (「資産運用におけるゴール設定と出口戦略」シリーズ 全体の目次)


 1. 動機・きっかけ
   2. 各種の前提条件の整理
     (1) 何歳まで生きるか?
     (2) お金の価値 ~ 物価上昇率
     (3) ライフステージと生活費(毎月の収支見込み)
   3. 目標(ゴール)の設定
     (1)75歳以降(後期高齢期)におけるゴール
      ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー(以上、投稿済)
     (2)75歳に向けた資金準備 (運用)


  4. まとめ


  5. EXIT(出口)戦略



3-(1)までは、前号までに投稿済みです。
今日は、3-(2)を書きます。



★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★


3-(2)  75歳以降に向けた資金準備(運用による資金準備)


最初に前号までのおさらいです。


Aさんという人がいました。Aさんは60歳で定年となり、同じ会社で再雇用状態に入って2~3年が過ぎました。今は時短勤務です。
子供は既に独り立ちして奥さんと二人暮らしです。
さて時短勤務で時間ができたこともあり、この先の老後の生活資金を検証しています。


63歳の今から75歳までは、細々とではありますが自分も妻もアルバイト収入もありますし、80歳まで出る企業年金(=退職金の一部を分割で後払いとした分)と、65歳から本格的に出る厚生年金を足し合わせれば、まとめて一時金で受け取った退職金には 暫くは手を付けず、また預貯金の取り崩しもなく、何とか暮らせそうです。


しかしながら心配は、75歳以降の後期高齢期のことです。今のように働けるとは考えていません。また、いつまでも健康が続く保証はないし、認知症になる可能性もあります。
(私の父と 妻の母は、晩年は認知症でした。)


そこで、一つのシナリオとして、75歳以降は夫婦揃って有料の介護施設に入らざるを得ない場合を想定し、資金計画を作ってみることにしました。介護施設はこの地域では、 
平均的におおよそ一人あたり月20万円で、二人だと月40万円の費用がかかるようです。
(住居光熱費、管理費、食費、付帯介護費 は入っています。)


75歳以降の生活費収支は、ざっと次のように想定されました。


 【75歳以降の 毎月の収支】
    収入: 厚生国民年金          27万円(税引き前、夫婦2人の年金を合算)
        企業年金                  1万円
      ―――――――――――――
           計         28万円


   支出: 介護施設費用    40万円(2人分)
       税と社会保険料    4万円(2人分)
       交際費お小遣い等   4万円 (2人分)
       ―――――――――――――――
            計    48万円


   ※ 月々の不足額: 28万円−48万円= ▲20万円 ( 月 20万円の不足)


【生涯不足額】
生涯通算では、20万円不足×12か月×20年間(75歳~95歳)=4800万円 が不足となります。


そこでAさんは、75歳~95歳の間の生活において不足する4800万円を、運用と取り崩しによってまかなうとしたら、75歳時点でいくらの資金があれば良いか計算しました。
計算の結果、75歳時点で4000万円の資金があれば、それを運用で年利回り4%(税引き前)で少しづつ増やししながら、かつ徐々に取り崩してゆけば、95歳で告別費用等に充てる500万円位を残して無事に天寿まで行けそうです。単純な預金の取り崩しに比べて、運用によって800万円+500万円=1300万円増やせたことになります。
  (詳細は、前号:資産運用における ゴール設定 と 出口戦略 (その5)をご覧下さい)


運用方法は、主としてリスクの少ないタイプの投資信託を選ぶことを想定していますが、運用元本は証券口座等に預けっぱなしにし、配当金や取崩し金を自動的にAさんのメインバンクの口座に月に一度振り込んで貰います。介護施設には、そこから自動振替え支払いの設定を75歳の施設入居時点で銀行に申し込んでおくことを考えています。
(後期高齢期に入ると、パソコンを見て運用状況をチェックしたり、証券会社や銀行の
 窓口を訪れることが困難になっている可能性があるためです。)



さて本日は、上記の4000万円を、60歳を少し過ぎた今から用意する方法論について検討します。 (既に十分な金額がある場合は、検討の必要はないかも知れません。)


Aさんのケースにあてはめ、定年後の再雇用中である63歳(一例)から75歳までの12年あまりの間に投資で運用するとします。(定年後の老後資金のための運用の一つのモデルケースです。)
その期間に運用で増やして、後期高齢者入りする75歳で税引き後4000万円を手にするためには、投資元本がいくら必要で、どのような投資対象があるかというスタディーです。


<目標額>
  ・75歳で、税引き後の手取りが 4000万円


<導き出したい答え>
  ・必要な元本の金額
  ・投資する銘柄の例


75歳までの12年あまりの間で運用するとすれば、それなりに長期です。重要な老後資金ですから、元本割れは起こしたくないし、他方で利子・配当だけでなくある程度のキャピタルゲインも合わせて得られるようにしたい。


<方法論>
 ・運用対象市場
   日本株よりも右肩上がりで着実に成長して来た米国株式市場を使用することに
  します。



  図 -1 米国ニューヨーク市場・ダウ平均株価の推移



   図 -1で見るように、ニューヨーク証券取引所発足以来、幾多の不況や経済危機に
   見舞われて来ましたが、概ね数年以内には暴落直前の高値を回復し、その後上昇し
   て、長期的にみると成長を続けています。
   図を見ると、一番厳しかったのは、2000年のITバブル(ネットバブル)崩壊から
   2009年のリーマンショックの二番底(大底)までの間で、ダウ平均がITバブル前の
   株価に戻すのに約10年かかっています。
   今回は12年半の運用を想定しているのと、ダウ平均よりもパフォーマンスの良い
   ベンチマーク指標に連動するETFを選び、合わせて配当を再投資する複利効果を
   併用する方法を選べば、元本割れの可能性は非常に低いと考えています。


 ・投資対象銘柄
   ニューヨーク株式市場にベースを置く定評あるベンチマークに準拠し、投資対象銘
  柄が分散されて安全性の高い“ETF”(上場投資信託)を今回は使用することにします。


 ・税の関係
   税については次の通りです。75歳で運用を完了しETFを売って換金(米ドルから
  円に転換)しますが、米国内ではキャピタルゲインは非課税と理解しています。
   配当に対しては米国内で10%の税がかかりますが、日本にて確定申告で外国税額
  控除を利用して取り戻すこととします。従って総合しますと、税は、日本国内の所得
  税の20.315%のみを考慮します。



<具体論>
  ・運用開始の年齢が55歳くらいまでであれば、75歳まで20年あるので積み立て投資が
  望ましいと思いますが、今回はスタート年齢がやや遅いことから、例えば63歳時点
  での一括投資で試算してみます。
   ( "積み立て投資" の結果も興味深いので、後日、余裕があればやってみます。)


 ・運用する銘柄として、候補として下記3種のETFを選択しました。
    ◇ VOO  バンガード S&P500 ETF
        ベンチマーク:S&P500指数


    ◇ VIG  バンガード 米国増配株式ETF
        ベンチマーク:NASDAQ USディビデンド・アチーバーズ・セレクト・インデックス


    ◇ VYM  バンガード 米国高配当株式ETF
        ベンチマーク:FTSE ハイディビデンド・イールド・インデックス


  いずれも、米国内でも日本の投資家の間でも非常に人気の高いETFと言われて
  います。


 ・配当の扱い
   配当は、全額再投資する場合と、そのまま受け取る場合の両方について、必要と
  なる元本金額の違いを算出して比較します。


 ・レートは、1$=108円 とします。(運用開始時も 運用終了後の円転換時も。)


 ・計算方法: portfolio visualizer を使用し、約12年間のバックテストでシミュレー
  ションをします。
     https://www.portfoliovisualizer.com/backtest-portfolio


 ・バックテスト期間
   2008年1月1日~2020年6月30日 (12年と6か月)


   <理由> 株価は上昇するばかりではなく様々な不況や暴落があり得ます。2008年
      以降の上記の期間内には、大きな株価変動として、リーマンショック、
      チャイナショック(中国人民元切り下げによる世界同時株安)、それに、
      今まさに進行中のコロナショックの3つの大きな出来事がありました。
      将来は誰にも言い当てることはできませんが、不況や経済ショックは
      これからの将来の12, 3年の間にも何度かあるでしょう。それを想定して
      おくことは必要です。(バックテストには意味があります。)
      なお、2008年1月1日は、リーマンショックの直前の高値の時期であり、
      この時点からスタートする運用バックテストは、(その直後にリーマン
      ショックの大幅下落を浴びるため)非常に過酷な条件なので、出てきた結果
      の信頼性は、それなりに高いと考えています。


 ・出来上がりの金額
  運用益(出来上がり金額 マイナス 元本)に対して20.315%の所得税がかかりますが、
  税引き後の円貨(1$=108円)で4000万円の手取りとなる場合の運用出来上がりの
  ドルの金額は目の子でおおよそ$440,000くらいでしょう。


ドルベースの出来上がり(税引き前)で$440,000を得られる初期投資の額を、portfolio
visualizerで、上記の数ケースについて計算してみました。
配当再投資と 配当は再投資しないでそのまま受け取る場合の両ケースで行いました。


つまり、下記の6つのケースについてバックテストし、パフォーマンスを試算しました。
  ① VOOに投資し、配当再投資する
  ② VIGに投資し、 配当再投資する
  ③ VYMに投資し、配当再投資する
  ④ VOOに投資し、配当再投資しない
  ⑤ VIGに投資し、 配当再投資しない
  ⑥ VYMに投資し、配当再投資しない


シミュレーション結果をお示しします。表 -1をご覧ください。



   表-1 ドルベースでの運用結果(税引き前)


    
予想通りではありますが、VOOの「配当再投資あり」が最もパフォーマンスが良いようです。
出来上がりで44万ドル(税引前)を得るために必要な元本は、VOO「再投資あり」で、
13.3万ドルとなりました。大きな3つの暴落を乗り越えておおよそ元本の3.3倍となり、ダウ平均以上のパフォーマンス出していますが、これはS&P500の成績がダウ平均を上回っていることもありますが、配当再投資の複利効果が出ていると思います。


次に、表-1の結果をベースに、日本円で税引き後の手取りで4000万円を得るために、
円貨の元本がいくら必要か計算しました。1$=108円で変わらずとし、所得税率は20.315%としました。
その結果を、表-2に示します。



   表 -2  所得税を加味した手取り(税引き後)の 
      円貨建運用シミュレーション結果


補足しますが、この先13年後の(円対ドル)為替レートがどう変わっているか誰にもわかりませんので、為替リスクは当然あります。ただ運用益が吹き飛ぶ1$=60円程度の円高になっている可能性は非常に低いと考えています。なぜなら、残念ながら日本のGDP経済成長率は、少子高齢化による生産年齢人口の減少のために将来とも米国よりも低いと想定されており、そのことを考慮すると円が強くなる(円高になる)とは考えにくいためです。


さて、表-2を見ると、VOOを選択して配当再投資をする場合、運用元本は1409万円で済みます。
また高配当を得たい場合でVYMを選択し、配当再投資をしない場合には、元本として2794万円を用意できればOKです。


75歳まではアルバイト/パート収入、(一部 後払い型の退職金である)企業年金、65歳から出る厚生国民年金を加えてフローの収入が概ね足りていて、配当を直接手にしなくて済むのであれば、現役時代の預貯金や退職一時金の中から、”生活防衛資金と臨時対応引き当”てを除いた余裕資金を明らかにして1400万円を都合つけられるならば、上記のような運用を行うという手はあるのではないでしょうか?


今日のブログの最後に、参考までに、portfolio visualizerのバックテストのチャートの
一部を添付します。


   図-2 VOO運用<配当再投資あり>のリターン曲線

  ※  ↑ 図-2にて、 13.3万ドルを投入すると、44万ドルになっています。



      図-4 VYM運用<配当再投資無し>のリターン曲線



更に、VYM<配当再投資無し> から受け取る配当の金額は、図-5 のとおりです。


      図-5 VYM<配当再投資無し>の配当
     

     〘図 -5 注意〙 2020年は上期いっぱいの6月末で運用終了としたため、
              配当は6か月分となっています。




もしなにか、間違い等も含めてお気づきになられましたら、何なりとご指摘のほどを
お願い致します。


少々複雑な内容でしたが、最後までお読みいただき、ありがとうございました。