森のそよ風のブログ

ゆっくり資産運用と、日常の記録

バリュー/グロースの保有比率に伴うポートフォリオ性能の違い


こんにちは。


 以前に当muragonブログ内で投稿されている投資ブログの友人から、「米国投資のポートフォリオ内の バリューセクターとグロースセクターの 配分比率は、どのような配分が一番良いのだろうか?」という趣旨の問題提起をいただいたことがあります。
 言葉は必ずしもこの通りではありませんでしたが、趣旨としてそのような内容だったと記憶しています。


 筆者は、その時までは、S&P500インデックス、バリューセクター、グロースセクターを、それぞれ1/3ずつ持つのが最もバランスが良いだろうと漠然と簡単に考えておりました。
 実際の保有状況も、S&P500インデックスの比率とグロースの比率が若干高めであったものの、上記に比較的近い状態ではありました。


 ところが、今年3月からの米国利上げへの警戒が一気に顕在化した先月の 24日と28日に相次いで市場株価が大きく下がった際に、筆者のポートフォリオの評価額が想定以上に下がりました。市場は2月21日の週も深掘りが続きました。


 これをきっかけに、インデックスETF・バリューETF・グロースETFの中身をもう少ししっかり捉え、ポートフォリオ全体としての「VG (バリュー・グロース) 配分比率」を洗い直そうと思い至りました。


 今日は、この VG配分比率と、ポートフォリオの性能の相関関係について、分析をしてみました。
 色々と発見がありました。



1.主なETFの内部構成について



 まず人気の高い主なETF (上場投資信託) について、その構成銘柄の中身が、バリューとグロースにどう配分されているのか調べました。


 その結果を示したものが下の表です。Portfolio Visualizerのデータベースからデータを引用させていただきました。



 上表を見ると、USトータル・​マーケット・インデックスに連動するETFであるVTIが、グロース比率が60%もあり意外に高いことがわかりました。ちなみにS&P500指数に連動するVOO ETF も、(ここには表記していませんが) 同様にグロース銘柄が過半の55%程度を占めています。市場を代表するインデックスは必ずしもバリューセクターとグロースセクターが丁度半々の値動きをするわけではありませんでした。グロース寄りです。
 要するに長期の米国のチャートを見てわかるように、私たちが長期米国インデックス投資でキャピタル資産形成の恩恵を受けている原動力は、グロース企業群の牽引にあったことが良くわかります。


 またバリューの代表選手であるVYMが利上げ局面で底堅いのは、ディフェンシブが多いだけでなく、債券を14%も含んでいる要因があることも、改めて認識しました。


 
2.仮想ポートフォリオパターンの設定


 次に、「バリュー」と「グロース」の含有比率の違いが、ポートフォリオ全体の性能(リターンや 下げ局面の下落率の特性)にどのように影響するのか測るために、テストのためのポートフォリオのパターンを、3~4通り用意しました。


 下表がそれです。




【説明】
・パターン①
  インデックスのVTI、バリューセクターのVYM、グロースセクターのQQQを、
  それぞれ1/3ずつ保有するパターンです。
  このパターンは実質的にバリュー35%、グロース約60%です。
  1月までの筆者の実ポートフォリオに比較的近いです。


・パターン②
  ②は、各ETFの中身の「VG比率」 (バリューとグロースの含有比) を意識して、
  ポートフォリオ全体として バリューとグロースが同程度になるように、
  各ETFの投入率を配分調整したパターンです。


・パターン③
  ③も、全体としてはバリューとグロースを等分にするも、
  QQQ無しで構成したパターンです。


・パターン④
  ④は、仮に 連続増配ETFである VIG一本でも 試しにやってみることにしました。
  VIG というETFは、バリューの性質と グロースの性質を 一定程度ずつ合わせ持って
  いると言われており、ベテランに人気のあるETFです。
  代表的なインデックスとは 多少動きが異なると思われます。



3.バックテストシミュレーションの実施条件


 さて、上記の4パターンでシミュレーション(バックテスト)をしてみます。
 ツールはいつもの Portfolio Visualizer です。


(1)開始時期・終了時期


   開始時期は、5年前の2017年1月としました。
   終了時期は、2022年1月末としました。(5年間)
  
 これにより、2018年末のVIXショック、2020年2月3月のコロナショック下落、2021年9月中旬から10月中旬の調整、2022年1月の利上げ警戒調整の影響を含めることができます。
(2月に入って、Portfolio Visualizerに1月実績データが追加されました。)


(2)初期投資・途中のリバランス


   初期投資・・・$10000
   途中のリバランス・・・なし


(3)新規追加投資、配当再投資


   新規追加投資・・・「なし」
   配当再投資・・・・「あり」



4.バックテストシミュレーションの結果


 シミュレーションの結果は、下記のようになりました。


 まず、ポートフォリオ評価額推移のグラフです。




 グラフは2葉ありますが、(その1)と(その2)で、パターン①、パターン② および 
ベンチマークのVOOは、どちらにも描かれています。(同じもものです。)
 (その2)は、(その1)の中からパターン③を外して、その代わりにパターン④を入れて図示しました。(同じグラフ上で 4本しか描けないためです。)


 どのパターンも、5年で評価額が2倍から2.35倍 の範囲に入っています。年平均成長率が14%を越えているのは、なかなかですね。


 グラフだけでは標準偏差やシャープレシオが表しきれないので、別途出力された付随データを含めて見やすく一覧表化しました。そのが下表です。



《考察・見方》


・パターン①(VTI, VYM, QQQ に3均等)
 総合的なグロース比率が約60%と高いだけあって、最終のトータルリターンはVOOよりも大きく第1位です。5年ないしはそれ以上の中長期で考えれば、シャープレシオ・ソルティーノレシオともに優れています。


・パターン②(バリューとグロースが均等。QQQありで構成)
 比較的現実的なポートフォリオと考えます。ただし、グロース比率がベンチマークのVOOよりも低くなっているため、最終のトータルリターンはVOOよりも1割程度少ないです。


・パターン③(バリューとグロースが均等。QQQ無しで構成)
 ナスダック銘柄の恩恵が少ないため、ベンチマークのVOOと比べ、配当再投資を含めても最終のトータルリターンは、16%程度劣ります。
 5年ないし それ以上の中長期のトータル性能は意外に良くなく、経済成長を取り逃がしている傾向が出ていると考えられます。またコロナショックでの下落率が案外大きめです。バリューセクターも、地合いの下落理由によっては遠慮なく売り込まれることは、私たちは既に経験しています。


・パターン④(VIG 100%で運用した場合)
 一番最初に出した表を見ると、VIGのバリュー比率は意外に高いです。その上、債券も
10%含んでいます。つまり全体としてのディフェンシブ性能は備えていそうです。
 その割には、最終のトータルリターンは、パターン②と遜色ありません。標準偏差と月間最大下落率については、ベンチマークのVOOを含めた5パターンで最も良い数字となっています。ソルティノレシオも良い結果です。
 このことから、一口でバリューセクターと言っても、実際には様々あることが推し量れます。連続増配のバリューは、一定の成長力も備えていそうです。


・ベンチマーク(VOO)
 グロース比率は54%で、パターン①に次いで高いです。これに伴いリターンは2位です。
 他のパターンとの内蔵VG比の相対位置関係から見て、妥当な結果でしょう。



5.総合コメント


 思っていた以上に色々発見がありました。  


 シンプルにVTI または VOOだけの投資も、今回の①~④のパターンも、比較的おとなしい範囲で振っていますので、リターンには さほど大きな差は出ていません。どのパターンも、グロースに偏重したハイリスクな組み合わせではなく、逆に バリューに偏り過ぎてリターンが過小となった姿でもありません。いずれも、十分にリーズナブルで許容範囲だと筆者は考えています。


 その上であえて言えば、筆者の1月までのポートフォリオ構造に似たパターン①は、悪くはないと思いますが、上に図示したポートフォリオの成長グラフ折れ線グラフ)を見ると、やはり金利上昇警戒局面では、VOOよりも、他のパターンよりも、下落が若干目立つ構成であったと認識(自覚)しました。
 5年以上の継続運用なら配当再投資含めたトータルリターンが高く、なかなか優れていますが、筆者の場合は今後の運用期間があまり長くないことを考えれば、少しアグレッシブ過ぎたかも知れません。


 そういう意味では、1月下旬に決断したように、グロースを少し減らして バリューのVYMを少し増やす調整は、あっても良いと再確認しました。


 しかしながら他方で、5年ないしは それ以上の中長期運用では、用心のために バリューを増やし過ぎて『角をためて牛を殺す』形になると、米国経済の成長力を自然体で引き出せず勿体ないことも認識しました。ETFでポートフォリオ配分を上手く組んで、放置しても自然にリターンが入って来るようにしたいものです。


 その両方の観点から、私の場合ですが、先日のブログにも書いたリバランスの方針である、VIGとVOOをツートップとし、QQQのエンジンと、ディフェンシブな VYM、XLP、「配当貴族指数ファンド」を 適切な比率で組み合わせるという方針は、それなりに働きそうな気がします。面倒くさければVIG一本の配当再投資でも手堅く米国経済の豊かさを引き出せそうです。この先 数年後に米国の銘柄数を集約したくなった場合には、VIGへの一本化もリスクを抑えながらリターンをそこそこ確保できそうで、十分検討に値すると評価しました。



 まとめです。
 筆者の場合は、残存する運用期間は あと7年程度で、今さら遠回りをする時間はなく、かと言って、米国経済のパワーを取り逃がすリスクを背負う時間的な余裕も もうありません。
 また、必ずしも頻繁に起きるわけではありませんが、金利警戒局面での下落を抑えたいのも事実です。
 今後の時間軸を含めて考慮すると、私の場合はパターン②かパターン④が、リターンと下落限定の両立が図れる 一つの適した姿であると考えています。
 ただ、人それぞれで、投資期間が異なるし、事情も違うでしょう。


 ブログ友人のJ.M.様、有意義なコメントありがとうございました。


 バックテストツールに2月末までのデータベースが整備された段階で、2月まで含めた本シミュレーションを再度やってみたいと考えます。



 さて、引き続き 残された運用期間内で最適な結果が得られるよう進めて行きます。
ある程度リバランスも行ったので、徐々に放置モードに移行して、市場からの果実の収穫を見守ります。



 本日も最後までお読みいただき、ありがとうございました。