森のそよ風のブログ

日常生活の記録、旅行記、世の中の動向の観察

ホワイトデー 今は昔(再掲)


こんにちは。


今日は、ホワイトデーですね。

以前と比べてかなりクールダウンした感があるホワイトデーですが、数年前に掲載した話題(十数年前の経験談)を再掲したいと思います。


ホワイトデーの話題に行く前に、1か月前の14日はバレンタインデー💝でした。

バレンタインデーの意義も 大きく変化したようで、女性が意中の男性に本命チョコを渡すことはメインではなくなって、女性が同性の友人に渡す「友チョコ」や、自分へのご褒美としての「自分チョコ」が多くなっているとか...。


筆者は、十数年前まで米国で8~9年 仕事をしていた時期がありますが、バレンタインデーが「女性から男性への告白とプレゼントの日」という意味は、米国では当時から全くなかったと思います。
職場では、日ごろお世話になっている上司・部下・同僚に、男性からも 女性からも、異性・同性は問わず、感謝の気持ちを表現する日でした。
プレゼントの品も、チョコレートというのはほとんど見当たらず、お気に入りのワインや 自家製のクッキー、渡す相手の趣味の関係の品物などが多かったと見受けました。
筆者も仕事で近しいアメリカ人同僚の少人数に絞って、ワインや 米人でも食べられそうな日本の菓子などを渡したと記憶しています。


さて、一か月後のホワイトデーですね。
どうでしょう。日本特有のホワイトデーは、一時ほどの盛り上がりはないように思えます。


さて、現役の時のアメリカ勤務時代に担当していた部門では、筆者は 数十人のアメリカ人達とともに、欧米の企業向けの業務ソフトウェアを開発していました。
この米国の部門と 東京本社の開発部門との間で、当時 あるアプリケーション・ソフトウェアを共同開発しようという話が持ち上がり、東京から関係者数人が開発方針を整合する会議のためにダラスに出張してきました。翌年度の開発投資予算の決定時期を控えた2月下旬か3月の上旬の頃だったと思います。


日米の開発のキーマンが集まる この種の会議は、スムーズに和やかに進むこともあれば、しばしば開発方針や分担の面で意見の食い違いが生じることもあり、出向で米国に来ている日本人は、双方の言い分を立てて妥当な落としどころに導くことが重要な務めの一つでした。


その日は、少し緊迫した昼間の会議を何とか乗り切り、夜は親睦を深めようと懇親会をすることになりました。

話す言語は違っても、概念やテクニカルな用語は共通するので昼間の会議は (対立する事柄はあったとしても) 意思疎通は図れますが、アフター5では、話題が がらりと変わります。米国人だけで、あるいは日本人だけで 小さなグループに塊まってしまい、それぞれの言葉でローカルに話し始め、特に初対面のメンバー同士では盛り上がれないことが少なくなく、間に入る駐在出向者の工夫のしどころです。
一体 今夜はどうなることか・・・。


ともかくも皆でステーキハウスに繰り出しました。レストランの一室を貸し切りにして貰いました。

最初の乾杯が終わって少し経って、まだ全体の雰囲気が堅い中、アメリカ側のリーダー格の女性マネジャーの Cindyが、日本チームの責任者の筒井氏(男性:仮称)に 話題を投げかけました。


Cindy:ミスター ツツイ、”ホワイト・デー”  ッテ ナンデスカ? セツメイシテ クダサイ。
と訊いたものです。(もちろん英語で。)

アメリカでは White Day って 存在しませんからね。

皆、何の話が始まるのかと 耳がダンボの状態になっています。  

パーティーで、米国人だけ、日本人だけ で 塊ってしまうよりは、興味を引く面白い話題を提供することは 心理的な壁を取り除くのに非常に大事で、それでいて、意外に難しいのです。


筒井さんが答えて曰く、
筒井さん::We have Valentine’s Day on February 14th as you know.  Usually ladies present chocolates to men in our case. Then we have White Day in Japan on March 14th that is exactly one month later from the Valentine’s Day.  Men who got chocolates must give something to the ladies in return on the White Day.
(筆者の聞き取った英語は、多少怪しいです。)

と、真面目な性格を反映して 無難に返答をしました。

Cindy:All right, I understand.
と、とりあえず納得したという表情。


Cindyは実は それまでにも何度か日本出張の経験がある。ホワイト・デーの習慣を既にある程度知っていて、話題づくりのために あえて持ち出した風にも見える。こういった席では、けっこう気を遣っています。


皆が興味を持ちそうな話題が出たので、私も話の輪に入ってみることにしました。
懇親会参加者全員 (特にアメリカ人) に聞こえるように、
私: By the way, do you know obligation chocolate?  This is an important custom especially in Japan's business environment.

と言ってみました。

笑い声が起こり、あちこちでざわめきも出て、硬い空気がほぐれて来ました。


サンノゼから参加の米人のGary(男)がすぐに、
Gary: I have never heard that.  But I think I know it!
と反応してきた。義理チョコがわかって貰えるか自信はなかったが、ある程度通じたようです。

(「義理チョコ」という言葉も、今日では既に死語となってしまったかも知れません。)


ところで英語的に正しくは、obligated chocolate と言うらしいです。隣で米人の誰かが小声でそう言い直して自ら納得している様子です。


私は続けて、やはり今回 出張で来た玉木氏 (以前に米国7年の出向経験) に犠牲になってもらった。

私:Mr. Tamaki is very popular over there, so he might have got one hundred chocolates. It must have been very difficult for him to distinguish true Valentine chocolates from the obligated ones!
と言ったら 大笑いになりました。


それがおさまり、しばし間をおいて最初のCindyが、
Cindy: Mr. Tsutsui, then, what and who do you return gifts on White Day for obligated chocolates?
と東京の筒井氏に向かって訊いた。流れ的に面白い展開の質問です。

筒井氏: We usually give candies or cookies in return to secretaries or woman-colleagues.
とソツなく返答しました。米人皆、興味深そうに聴いています。


私: Everybody,  the most important point is that you must not forget the return gifts on White Day. If you forget it, then you will not get nice smiles from colleagues for about one month probably.

と言ったら爆笑になった。今だったら、セクハラ か パワハラ スレスレの発言ですよね。
私: Of course this is just a joke.  But it’s better not to forget it.
と言って自分でフォローしました。


日米の懇親会は打ち解けて、 あちこちで 米人と日本人が入り混じって話の輪ができ、笑い声が起きて、夜が次第に更けてゆきました。


今でもホワイトデーが近づくと、この時の懇親会を 思い出します。
まだ40代の脂が乗っていた頃のアメリカ人たちとの仕事や飲み会、懐かしい米国勤務時の思い出の一つです。当時からすると、今日の文化・習慣は、かなり変わったと実感します。


ではまた。